急速拡大装置とは、上顎の歯列の横幅（歯列弓：しれつきゅう）を拡大させる、固定式の拡大床です。金属製のバンドと太いワイヤー、そして横幅を拡げる力を調整するネジでできています。上顎が成長する、10歳頃までの子供に使われます。「抜歯しての治療を勧められているが、どうしても抜歯したくない時」にも使用されることが多い装置です。
金属製のバンドで歯に固定されるため、ご自身で外すことはできません。ただし、通常のマルチブラケット法よりも早く歯が移動するため、矯正期間は1～3ヶ月と比較短く済みます。さらに、上顎骨の上に位置する鼻腔も拡がるため、鼻呼吸がスムーズにできるようにもなります。

急速拡大装置の効果が期待できる年齢は、正中口蓋縫合が自然に開く「思春期ぐらいまで」だと言われています。ただし、思春期を過ぎても「25歳頃まで」の年齢でしたら、効果が期待できることもあります（永久歯が生えそろってからあまり時間が経過していないため）。

小児矯正では、永久歯に生えそろう前の年代（6～12歳頃）に、急速拡大装置で顎の幅を広げて歯を動かすスペースを確保していきます。その後、ワイヤーやインビザラインファーストを用いて歯列を整えていきます。

もちろん歯や顎の成長は、一人ひとり異なるものです。医師による正確な検査・診断を行ってから、子供の成長に考慮した矯正方法を決定していきます。

急速拡大装置には、スクリュー（装置の横幅を調節するネジ）が埋め込まれています。このスクリューを回すことで装置が側方に広がり、上顎全体が左右に広がるようになります。
ただしこのスクリューは、子供自身で回すことは難しいです。そのためご家族の方には、専用の道具を使ってスクリューを回していただき、歯列にかかる負荷をかけていただく必要があります。
ネジの回転は1日につき1/4回転ほどで、0.2mmほど広げていただきます。この回転を続けると、30日で6mmほど顎の横幅が広がります。
1～3ヶ月の矯正期間が終了した後は、後戻りを防ぐため、装置の幅を固定したまま6ヵ月ほど装置を着けていただきます。

また、着脱できる急速拡大装置を使う場合は、1日12時間〜15時間ほど、装置を着け続けていただく必要があります。慣れない頃は舌が当たって発音しづらくなったり、食べ物が飲み込みにくくなったりするかもしれません。

お子さまに歯列矯正を受けさせようか、悩み続けている方もいるのではないでしょうか。しかし、歯並びを骨格から矯正できる期間は、非常に限られています。
「成長したら歯並びも変わるかも……」と思って放置すると、歯列矯正のタイミングを逃してしまうかもしれません。
当院では、歯科矯正の専門医によるカウンセリングを行っています。
お子さまの矯正治療の実績・スキルに長けた医師が担当していますので、どんな些細なことでも、お気軽にご相談ください。